アブストラクト
両大戦間期のイギリス演劇は、従来、作品解釈を中心とした文学研究の対象になることは少なかったが、 近年、ゲイ・スタディーズやフェミニズムの立場からこの時代の演劇を再考する動きが少しずつ見られるようになってきた。
本論は、それらの研究成果を踏まえながら、両大戦間期におけるノエル・カワードの劇と文化との相互干渉的な関係を明らかにする試みである。 まず、当時の社会的コンテクストに目を向け、この時期のイギリスでは女性性に関する論争が盛んに行われていたことを概観し、 その上で、カワードが喜劇の伝統的なコンヴェンションの法則をわずかに変更する形で作品を創作することによって、 伝統的なジェンダーの規範に疑問を投げかけた点を検証する。
(Libra vol.2, pp.23-42, 2000)