アブストラクト
日中戦争の勃発当初から日本軍は中国の諸都市に対して空襲を行った。これに対して国際連盟は 9月に非難決議を発する。本稿は、この決議を踏まえて空襲の正当性をいかに主張するかをめぐって行われた 論争をもとに、当時の空襲に関する国際的規範の特質を解明することを目的とする。考察の内容は、第一に、 軍事目標主義をめぐって行われる「空襲法」論争の論点、第二に、軍事目標主義と無差別爆撃を前提とする 航空戦理論との関係、第三に、軍事目標主義自体が孕む矛盾およびそれがもたらす空襲の実態と軍事目標主義 の目的との乖離、第四に、1932年から開催された一般軍縮会議における空襲全廃論や爆撃機全廃論である。 以上を総合して,30年代における空襲の規律化の試みを歴史的に位置づける。
(Libra vol.1, pp.1-39, 1999)